胃の中の内容物が食道に逆流してしまうことで起こる病気です。この逆流によって、食道に炎症が起きたり、胸やけ(胸やみぞおちが焼けるように感じる症状)や口の中に酸っぱい液体が上がってくるような症状が現れます。これらの症状が続くと、日常生活に支障をきたすことがあります。また、逆流が原因で、咳や喘息、鼻の炎症、睡眠の問題が起こる場合もあります。GERDの治療では、症状を和らげて生活の質を向上させることを目指します。まずは食事の見直しや生活習慣の改善、薬を使った治療が行われますが、それでも改善が見られない場合があります。そのような場合、以前は外科手術が主な選択肢でしたが、手術には体への負担が大きいという課題がありました。
そこで、2014年から、昭和大学江東豊洲病院の井上晴洋教授らが、内視鏡(胃カメラ)を使った複数の新しい治療法「内視鏡的胃食道逆流防止術(ARMS、ARMA、ARM-P、ARM-PV)」を発表しました。この方法では、体の外に傷をつけずに内視鏡で治療を行うため、患者さんへの負担が少ないのが特徴です。これらの治療法の多くは、現在、効果と安全性が認められ、保険適用で行われています。福岡大学では、2023年10月からこれらの治療を本格的に開始しました。
内視鏡的胃食道逆流防止術は、全身麻酔のもと内視鏡(胃カメラ)を用いて行います。
治療では、胃の粘膜(内側の壁)の一部を切除します。必要に応じて、切除した部分や胃の筋肉を縫い縮めたり、さらに粘膜を焼く処置を行うことがあります。縫い縮めた場合、治療の効果は手術後すぐに現れることが多いですが、縫い縮めない場合は、切除した部分が自然に治る過程で瘢痕(ひきつれ)ができ、それによって胃の入り口が程よく閉じることで症状が改善していくため、十分な治療効果が得られるまでに数か月かかることがあります。どのような治療法を選択するかは、患者さんの様々な状況によって、最も適切な方法を選択しています。
これまでの研究では、内視鏡的逆流防止術の結果は以下の通りです
治療成功率: 100%
症状の改善率: 治療後6か月以内で78%、1年後で72%、3年後で73%
薬の中止率: 治療後1年で64%の患者さんが酸分泌を抑える薬を中止
(Rodríguez de Santiago E.らによる、内視鏡的逆流防止術に関する報告から引用)
当院で行った内視鏡的胃食道逆流防止術の治療前後の画像です。
・問診
・内視鏡検査(胃カメラ)
・EPSIS(内視鏡を使って胃内の圧力を詳細に測定する検査)
・24時間PHモニタリング検査
・食道造影検査(バリウムの検査)
・食道内圧検査(食道の圧力を測る検査)
GERDとアカラシアは、当院ではどちらの病気も専門的に行っているため、症状にお困りの場合は、下記の方にご連絡ください。
福岡大学病院 消化器センター外来
月曜日~金曜日 9時~16時
TEL:092-801-1011
Email:poem.fukuoka■gmail.com(■を@に変更して下さい)
※当メールアドレスのご使用は初診の場合に限らせて頂きます。