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「肥満」とは脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、日本ではBMI(体重kg/身長(m)2)が25以上の状態を指します。
「肥満症」は肥満に関連したもしくは肥満が原因となった病気(健康障害)を合併しているもしくは病気が予想される状態で、医学的に減量が必要な状態としされます。
(肥満症診療ガイドライン2022)
肥満が原因もしくは関連するとされる健康障害 | |
1 | 2型糖尿病、耐糖能異常 |
2 |
脂質異常症(高コレステロール血症、脂質代謝異常症など) |
3 | 高血圧 |
4 |
高尿酸血症、痛風 |
5 | 肝動脈疾患(心筋梗塞、狭心症など) |
6 | 脳梗塞、一過性脳虚血発作 |
7 | 非アルコール性脂肪性肝疾患 |
8 | 月経異常、女性不妊 |
9 | 閉塞性睡眠時無呼吸症候群、肥満低換気症候群 |
10 | 運動器疾患(変形性観察症:膝関節・股関節・手指関節、変形性脊椎症) |
11 | 肥満関連腎臓病 |
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肥満症診断のフローチャート
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肥満症に対する治療はまず食事療法・運動療法、行動療法を中心とした内科的治療が基本となります。また、近年は肥満症に対する薬物治療も開発されています。しかし、内科治療を行っても十分な減量が難しい場合や減量した状態の維持が難しい場合(リバウンド)があります。そういった問題を解決するために考えられたのが肥満外科手術(減量・代謝改善手術)です。
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現在当院で行うことのできる肥満外科手術は腹腔鏡下スリーブ胃切除術(図)になり、本邦で唯一保険適応となっている手術です。腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は胃をスリーブ状(袖状)に細くなるように胃を切除します。手術時間は、状況により異なりますが、およそ3-4時間程度です。術後の経過は患者さんの状態により異ることがありますが、およそ7日から10日ほどの入院が必要です。
この手術により胃の貯留量は100~150ml程度に少なくなるため、食事量が減少します。また、食欲ホルモンとされるグレリンの低下や糖代謝に関わるホルモンGLP-1の亢進などが減量や糖代謝の改善に関与すると考えられています。
(太田正之、スリーブ状胃切除術の糖代謝や摂食中枢に与える影響、外科と代謝 50巻4合、2016年8月、卯木智BariastricSurgeryniおける腸管の意義、Diabetes Frontirs vol28, No.2, 2017-2)
図(日本における高度肥満症に対する安全で卓越した外科治療のためのガイドライン(2013年版)より抜粋
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6か月以上の内科治療をされ十分な効果の得られないBMI≧35の肥満があり、糖尿病、高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群のいずれか1つを合併する患者さんとなっています。
体重の目安として身長150cmの方なら78.8kg、身長160cmの方なら89.6kg、身長170cmの肩101kgとなります。
また、BMIが32以上35未満であっても、コントロールの難しい糖尿病や高血圧、睡眠時無呼吸症候群があり内科治療で十分な効果が得られない場合は適応となります。最終的には内分泌糖尿病内科や消化器外科、呼吸器内科、精神神経科などの多職種による協議により手術適応を決定いたします。
目安として当院受診いただいてから約4-6ヶ月程度で適応について判断し、手術を行います。
ご興味のある方がいらっしゃる場合は消化器外科外来までご連絡ください。