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胃カメラなどをうけて、「食道裂孔ヘルニア」や「逆流性食道炎」と診断された方も多いかと思います。通常ほとんどの場合、胃酸を抑える薬の内服により症状が改善する方が多いですが、状況によっては手術を検討した方がよい方もいらっしゃいます。
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胃の内容物(食事や胃酸など)が食道に逆流することで食道に炎症を生じる病気です。症状として主立った物としては食道症状といわれる「胸焼け」、「呑酸:酸っぱいものが上がってくる」があることが多いですが、稀に逆流性食道炎により食道外症状といわれる「胸痛」。「ぜんそく」、「嚥下障害」などを生じることもあります。
原因は加齢により逆流防止機構である下部食道括約筋という筋肉が弱くなってしまうことや食道裂孔ヘルニアの合併と考えられています。
診断の多くは胃カメラ:上部消化管内視鏡検査でされることが多く、食道に特徴的なびらんや潰瘍を確認することで診断できます。状況に応じて胃透視やCT検査、pH24時間モニタリング(細いセンサーを鼻孔から食道内に留置し、胃酸の逆流をみる検査)を行うこともあります。
逆流性食道炎の治療は生活習慣の改善と薬物治療です。具体的には就寝前に食べない、食後すぐに横にならない、腹八分目などです。また、逆流性食道炎の原因の多くは胃酸の逆流によると考えられており、胃酸を強力に抑える薬(制酸剤)により大半の方は症状の改善がみられます。しかし、一部の方は薬物治療や生活習慣を改めても症状の改善が得られない方がいらっしゃいます。そういった場合には手術が検討されます。
注釈:食道裂孔ヘルニアとは
体の中には胸とお腹の仕切りをする横隔膜とい膜状の筋肉が存在します。そこには食道の通る孔(食道裂孔)が存在しているのですが、そこの孔が大きくなりお腹の中に胃の一部や腹腔内の臓器の一部(大腸や脾臓など)が脱出することを食道裂孔ヘルニアといいます。(図)
原因は加齢による食道裂孔の弛緩や腹圧の上昇(妊娠や肥満、亀背:骨粗鬆症などで背中が曲がることなど)と考えられています。現在本邦では高齢化が進んでおり、増加傾向です。
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現在各種ガイドラインなどから本邦での手術を考慮した方がよい患者さんは以下の方になります。残念ながら術後逆流性食道炎(胃切除後、食道切除後)には効果がありません。
手術適応
① 逆流性食道炎による症状が内科治療でコントロール不良もしくはアレルギーなどが理由で
内科治療の継続ができない方
② 逆流性食道炎が原因によるぜんそく、嗄声、咳嗽、胸痛、誤嚥、嚥下障害などの症状がある方
③ 食道裂孔ヘルニアによる通過障害や出血などの症状がある方
特に高度な食道裂孔ヘルニアの場合(特に胃のほとんどが脱出している場合や結腸や小腸など他の臓器が脱出している場合など)
④ 食道裂孔から脱出した臓器による心臓の圧迫や肺の圧迫により循環・呼吸症状が生じる場合
(日本消化器病学会、胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021(改訂3版))
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逆流性食道炎・食道裂孔ヘルニアに対する手術術式
当科では腹腔鏡による手術を第一選択としています。
①食道裂孔ヘルニアを合併している場合には脱出した臓器を元の位置に戻します。通常食道裂孔
が緩んで開いた状態です。(図)
②食道が狭くならない程度に食道裂孔を縫い縮めます。(図)
③逆流防止のため食道に胃を巻き付けます(噴門形成術)(図)再発防止のためメッシュを使用
することもあります。
通常手術は3時間程度で出血も少ない治療です。術後は大きな変化がなければ5日から7日で
退院となります。
逆流性食道炎や食道裂孔ヘルニアでお困りの際はお気軽にお声かけください。