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腸管の粘膜に炎症や潰瘍を引き起こす原因不明の慢性疾患を総称して炎症性腸疾患といいます。潰瘍性大腸炎とクローン病がその主な疾患で、いずれも難病として特定疾患に指定されています。
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炎症性腸疾患の原因はよくわかっていませんが、患者さんの数は増加しています。本邦では潰瘍性大腸炎が約16万人、クローン病は約4万人です。
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近年、生物学的製剤などの新しい内科的治療のおかげで、以前に比べて病状のコントロールが良好になってきています。福岡大学消化器内科は炎症性腸疾患の治療においては全国でも有数の施設です。
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内科治療は格段に進歩しましたが、手術が必要な患者さんはおられます。クローン病では平均すると一生に1度は手術が必要になると言われています。
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炎症性腸疾患で長期間経過された患者さんでは、炎症にともなう発癌に注意が必要です。症状がなくても定期的に検査を受け、早期発見に努めましょう。
(発癌した場合には癌の治療が必要になります。大腸癌治療のリンクを御覧ください)
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炎症性腸疾患の患者さんは進学、就職、結婚、出産、育児など人生のイベントを、治療しながら迎えなければなりません。できる限り社会的事情に配慮しますが、手術が必要と判断された場合は、適切な時期に手術を行うことが大切です。
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福岡大学消化器外科では手術が必要な患者さんには、大腸がんの治療と同様にできるだけ患者さんの負担が少なく、手術に伴う合併症を防止できるように、腹腔鏡を用いた手術をできるだけ行うようにしています。
潰瘍性大腸炎で手術が必要になる状況
① 腸穿孔(穴が開く)、大量出血、中毒性巨大結腸
② 重症型、劇症型で内科治療が無効な場合
③ 大腸癌および前癌病変を合併した場合
① 難治例:内科治療で良くならないまたは重篤な副作用に悩まされる
② 腸管の狭窄、瘻孔(腸と腸がつながってしまう)などの症状が出現
③ 腸管以外の合併症の治療が難しい
クローン病で手術が必要になる状況
① 腸穿孔、大量出血、中毒性巨大結腸症、改善しない腸閉塞、膿瘍形成
② 小腸癌や大腸癌・直腸癌を合併
① 腸管の狭窄、瘻孔(腸と腸がつながってしまう)などの症状が出現
② 内科治療でよくならない腸管以外の合併症がある
③ 難治性肛門部病変(痔瘻、直腸腟瘻など)、直腸肛門病変による排便障害